『1640日の家族』1640日は里子を引き取って、結果的に引き離されるまでの期間。
4年半愛を注いだ里子と家族の物語。フランス映画。
フランス人は生命体として強い。
子ども部屋を二つに分割する必要があるとなれば、自分で天井に梁を渡して壁を買ってきて打ち付ける。
子どものフォースのおもちゃが壊れると、自分で半田ごてを持ち出してバチバチと配線をくっつけてしまう。
こんなに自分でなんでもできる日本人が果たしてどれくらいいる!?
例えば、流しの蛇口をきつく閉めても水滴がポタポタしたら、すぐに水の119番に電話して助けを求めてしまう。
そして大金を持っていかれる。This is us.
考え方にしても、ハロウィンの仮装を子どもにさせてあげた大人に向かって7歳くらいの子が「商業主義の奴隷」と言い放つ。
もう、さーせん。世間に踊らされてるっす。
自分で考え、自分でできることは全てやるフランスでは、里親に委託される子どもの数が日本のほぼ倍であるらしい。
おやと意外に思ったのだが、すぐに納得した。
親である自分、子ども、第三者からの判断、それぞれが持っている領域がはっきりしていて、問題がそれぞれの領域からはみ出して手に負えないと判断すれば、しがみつくことなく他者のサポートを依頼するという次のフェーズにパッと移っていくようだ。
「これ(里親)は私の仕事よ」というセリフも、日本映画ではなかなかお目にかかるまい。
6歳の里子にも、年の近い自分の子どもだちにも最初から血はつながっていないことを普通のこととして受け入れさせている。
里子には一人部屋を与える、宗教は家族と違ってもオリジンの宗教を信仰させる、などと同様、広く普及している制度上の決まりとして課せられているのかもしれない。
ドライですねえ。割り切ってますねえ。
映画を観ず、この話だけ聞くと、ウェットウェットな私としては引いてしまうかもしれない。
でも、映画の中で里親であるアンナが里子のシモンに向ける愛情は紛れもなく実の子に向ける愛情と同等で、愛する者から引き離される時の辛さはどんなシステムの中で暮らしていても、どんなに信条が違っても人類皆同じ。
最後はダバーっと泣きました。
実は監督は名作『E.T』『クライマー、クライマー』などの傑作を研究して、狙って狙ってシナリオを作り上げたそうな。
少し悔しいですが、ここはまんまとはまって泣きまくりましょう。