『別れる決心』第75回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品。
真面目な刑事と美しい容疑者は一つ目の殺人で出会い、別れ、そして二つ目の殺人で再会する
観終わった後に、ポスターのビジュアルが全てだったか!と感心し、余韻に浸ってポスターを見返したら、あれ、思ったのと違うやん。
わたしのイメージの中では、パトカーの後部座席に堤真一似の刑事と美しい容疑者が手錠でつながれて座っていて、お互いに相手とは反対側の窓から風景を眺めている。
ここまではよし。
ここからはわたしの記憶の中では、両者の手は触れるほど近くに置かれているが、絶対に触れ合わない。
互いに「自分の手はここにあるよ」と主張し、相手に「どうする?さ、どうするよ?」と無言のけん制を仕掛けている。
決して自分からは行動しない。
ぐぬ〜〜っ。
けれども、今ポスターを見るとしっかり女の小指が男の小指の上に乗ってるやん。
しかも女は素知らぬ表情だが、男は見方によっては目を閉じて必死に感情を抑える表情。
これって、こうでした?映画はこうなってました??
ちゃんと観れてなかったかしら。
いや、でも、思い返すと、物語はその通りで、刑事はかなり初めの方から、本人に言うかは別として容疑者への好意を隠さなかった。
それは、初めて対峙した取調室でケータリングで寿司をとった時から始まったに違いない。
向かい合って食べ終わった後に空き箱を重ね、ゴミを集め、デスクの上のものを持ち上げ表面をふき、現状復帰をするという一連の流れを、一言も発せず阿吽の呼吸で普段から二人でやり慣れてるかのように片付けた。
二人に会話が特に発生するわけでもなく、淡々とやり過ごすのだが、義務と約束で続く夫婦生活に生きる刑事には、一筋の光が差し込んだ瞬間だった。
職務半分、趣向半分の刑事の容疑者への監視が始まるのである。
容疑者は、健気なふりをして同情を引いて自分に好意を持つ刑事を利用しているだけなのか。全ての言葉、行動に裏の意味があるのではないか。
物語の最後の最後まで、刑事と一緒に異国語を話す容疑者の真意を掴もうと物語にのめり込むうちに、深海にゆっくりと落ちてゆくような気持ちにさせられる。
『オールドボーイ』のパク・チャヌク監督だが、刺激的だったりショッキングな映像はなく、物語は静かに進む。
絵画的な美しい映像を積み重ねながら主役二人の母国語が違うというエッセンスが効いた100%大人向けのサスペンス。
AI先生が描いた「二つの並んだ手」I created this art by #aipicasso