参上ルルのブログ

映画を観て思ったことを徒然と。

フクロウ、見えないところで意外と機敏

『梟ーフクロウー』盲目の鍼師ギョンスは、病の弟を救うため大金を稼げる宮廷で職を得るのに成功した。宮廷では、長らく清に人質に取られていた王の息子である王子夫妻が朝鮮に帰ってきたばかり。西洋文明を取り入れる清の先進性に触れてきた王子と、清に負けた明に未だ忠誠を誓う王、そして彼らを取り巻く家臣たちの思惑が入り乱れる。ある夜、体調を崩した王子の元に駆けつけたギョンスは、ある事実を「目撃」する───。2023年韓国国内で映画賞25冠の最多受賞を記録した傑作。

 

面白っ!すんごいっす!(←語彙力w)

わたしの極私的韓国カルチャー史の衝撃第一波は2000年頃の『シュリ』JSA』で、あの時もあまりの面白さにすっかり魂持っていかれたけれど、それ以来となる衝撃波。

その後も韓国傑作映画は数あれど、理屈抜きの王道エンタメでここまでのクオリティのものは久々なのでは?

なぜ日本でそこまで話題にならないのか不思議。騙されたと思って観てほしいわあ。

 

タイトルの「梟」を種明かしすると、夜行性ということ。

主人公の鍼師ギョンスは、盲目だ。

でも先天性だからか、目が見えないと言っても大体の日常的な行動は普通にこなせる。

なんだったら字も書ける…な訳なくない!?

というのも、絶対に自ら明かさないが、ギョンスは暗闇だととてもぼんやりだが見えるのだ。

太陽の光のもとだと見えなくなる。

 

「貧しいものは見て見ぬふりをしないと生きていけない」が口癖となっているギョンスは、周りが盲目として扱っていることを逆手にとっている節もあり、「盲人なので」「盲人だから」と、あえて普通の健常者の世界に入り込もうとはしない。

ギョンスを目が見えないと思って接する周りの人々。ある人は親切に。でも多くはぞんざいに。

宮廷に召し抱えられても、ギョンスのスタンスは変わらなかったが、王子の治療現場に同行させられた夜、医師が鍼治療と称して毒針で暗殺するのを目撃する。

医師はギョンスが盲目だから同行者に選んだのだ。

ギョンスによくしてくれた王子。そして自分の弟と同い年の王子の息子。

ギョンスの中で、正義がもたげる。

誰が味方で誰が敵か。

伏魔殿の中では、目が見えても本質は見えないものばかり。

 

ギョンスを演じたのは、リュ・ジョンヨルという俳優さん。

今流行りのイケメンK俳優という感じではなく、日本でいう森山未來柄本佑を足して割ったようないぶし銀の風貌が良い。

座頭市みたいな「剣持たせたらスゴいんです」という訳ではなく、鍼の腕は立つけれどそれ以外はごく普通の青年で、面倒臭いことからは離れていたい。

すごく親近感が持てる人物なのだ。

そんな彼がぼんやり視力が回復する月夜に、正義のためそして降りかかる危険から逃れるため奔走する。

『鬼滅』の鬼みたいに、夜にいきなり豹変して無双になる訳ではない。

あくまでぼんやりだから、いろんなとこにぶつかり転がりながら、機転を効かせて一か八かで危機をすり抜けていくのだ。

視力が弱いところが、ハラハラドキドキ指数を押し上げる。

 

見どころといえば、宮廷の美術も絢爛豪華。

宮殿の建物やインテリアだけではなく、韓服もどの衣装をとってもセンスの良い美しさで、どこを切り取っても絵になる。

一人、王の妻だったか、ドリフの雷様が背負っている太鼓みたいに、小さくて丸いアクセサリーを数個顔の周りの髪にアレンジで埋め込んだ高度なヘアースタイルもあったけれど、全然コントに見えなかった。お上品。

彼らの身のこなしも現代とは違うのだけれど、日本の時代劇とも違って興味深い。

位の高い女性は、王の前に座る時にあぐらだったりする。

書をしたためるのも、左手で書いて良いんだ、日本と違って右手に矯正されないんだな、と思っていたら…。

 

いや、だからほんと観てほしいっす!

 

AI先生が描いた「月光とフクロウ」This art is created by #aipicasso.