『波紋』平凡な主婦・依子は、夫が失踪して以来、新興宗教を心の拠り所とし、一人慎ましく生活していた。そんなある日、父の介護を押し付けて家族を捨てた夫がガンに罹患して帰宅。遠方に就職した息子は、障害のある彼女を結婚相手として伴って帰省。パート先にはクレイマー客が定期的に現れ、自身の更年期症状も好転する兆しがない──キャッチコピーは「絶望を笑え」。
朝、目を覚ますとすぐ目の前に年季の入った夫の足の裏がドーン。
依子は怒るでもなく、当たり前のこととして、ベッドを抜け出してカーテンを開けて一日が始まる。
これが、夫が失踪する前の幸福な生活だったのだ。
はぁー、結婚生活とはなんと恐ろしいものよ…毒女のわたしはここでまず震え上がった。
夫の失踪後、依子は新興宗教に入信した。
一人になったマイホームの庭に枯山水を作り、足の裏を見る代わりに一心不乱に箒を使って敷砂に模様を作る毎朝。
「女は家庭を守る」とは昔よく言われた価値観だが、守る家庭が壊れちゃうと、今度は体面だけでも保とうとするらしい。
よく飼い猫が庭を荒らしにくる隣家の主婦には、「旦那さんは単身赴任かなんかで、息子さんは遠方に就職して、義父を送り出して家を守る立派な奥さん」に見られているだろう(とは依子の願望)。
そのプライドがギリギリ依子を現状に繋ぎとめてたんだろうな。
それなのに、それなのに!
バカ夫が、亡くなった父親の遺産を自分のガンの治療費にあてがおうと帰ってくる。
わたしだったら○(ピー)しちゃうかも。
耐えに耐える依子にとって一筋の光明になったのがパート先の清掃員・木野花に会えたこと。
人見知りな依子が、声を潜めて身の上を話すと「夫に仕返しするのよ!いい、いい、私が許す!」
そこから、少しずつ依子は変わり始める。
夫の歯ブラシで排水管を磨いてちっぽけだけど仕返しを開始したり、パート先に来るクレーマー客に言い返したり。
そして、クライマックスには、観客の誰もが溜飲を下す依子が待っている。
配役がとても良い。
あまり周りとのコミュニケーションが得意ではない、そして日本のどこにでも居がちな主婦に筒井真理子、ダメ夫に光石研、クレーマー客に柄本明、先ほどの木野花と脇を固める役者が盤石。
中でも、新興宗教のリーダー・キムラ緑子の元にいる信者1、2の江口のりこと平岩紙。
二人が素の柔和な顔で、並んで優しく語りかけてくると、怪しさマックス!
目が笑ってないアルカイック・スマイルが過ぎるわ!
この二人よりさらに新参者をケムに巻く舞台装置になるのが、信者一同で歌う独特の歌と踊り。
皆で笑顔で円を作り牧歌的な歌を歌って、幼稚園児の振り付けのような踊りをつけるのだ。
な、何を見せられている…?
お隣韓国のドラマを見てると、宗教の踊りは縦ノリの、なんだったらタオルを振り回しいのの勢いなので、これもお国柄を表してるのかも。
海外の人から見ると、映画全てがザ・日本と思うかもしれない。
AI先生が描いた「枯山水」I created this art by #aipicasso