参上ルルのブログ

映画を観て思ったことを徒然と。

令和の妖怪ムカンシン

『妖怪の孫』2023年に制作されたドキュメンタリーに、新たに「今問われるべき負のレガシー」映像を追加し、リバイバル上映。ここで言う「妖怪」とは「昭和の妖怪」と言われた岸信介元首相、その孫とは2022年に銃撃された安倍晋三元首相を指す。歴代最長の任期期間を勤めた安倍元首相が日本に残したものとは───。

 

決して大きな声で言えないというか、恥を偲んで告白すると、わたしは政治オンチ。

言い訳がましいけれど、昔はもっとたくさんの政治家がわたしのような国民に知られていたのは確か。

大臣任命の時の首相からの電話待ちを、テレビカメラの前に余裕しゃくしゃくで鷹揚に構えながらも、目が宙をさまよい続けるおじさんの映像が家族団欒の場でよく流れていた。

そして、「あ〜、この人がこのポジションかあ」「そう来る?」なんて、政治に頓珍漢の人間にとってもエンターテインメント化してたような気がする。

そもそも大臣に任命される政治家の大多数の顔と名前を良くも悪くも知っていた。

それが、今は昔。今の内閣の何人をわたしは知っているのだろうか。 

これはひとえに自分の無関心によるものなのかと思っていたら、面白い側面が映画で紹介されていた。

安倍政権下で、政府からテレビ局に公正な報道をするようにとのお達しがあり、その結果、政権批判する各局の有名キャスターたちが揃って報道を降板。

一方、安倍政権では、広報の場をテレビから自分たち発信できるネットの世界へと主軸を替えた。

テレビでの広報活動を減らすのと、通達の効果で、テレビでの政治報道の時間が明らかに減ってきたと言うのだ。

 

アメリカのメディアがインタビューで答えていたが、欧米では取材対象と距離をとり独自の調査報道でネタを取っていくが、日本は取材対象と親しくなることで他よりもネタを流してもらうというスタンスなのだそうだ。

たまに話題になる「報道の自由度ランキング」では、日本は最近ずっとG7中最下位。

その一因はこのあたりにありそうだ。

 

映画では、安倍政策の裏側や数々の疑惑、統一教会との関係を検証していたが、個人的に最も面白かったのが、本人の華麗なる安倍一族への「恩讐」。

「昭和の妖怪」の祖父、岸信介は戦中は東條英機内閣の閣僚となり、戦後はA級戦犯として約3年獄中にいた。

写真もあった。いかにも獄囚で痩せて無精髭面の目だけがギラギラした戦争犯罪人

1948年の釈放後は、政界復帰し1957年には内閣総理大臣に。

獄中から10年も経たないうちに首相になんてこと、ある!?

その反対はあろうとも。

 

お祖父さん自体が、こんなかなりドラマチックな人生だけれど、その孫安倍晋三もその最期も含め一族のカルマを負う生涯となった。

生まれながらに人より腸が短かった少年は、多忙を極める父とそれにつきっきりの岸信介の娘である母から愛情を受けずに育つ。

母を恨み、岸信介を超えることこそ(=憲法改正)が生涯の目標となった。

父(安倍晋太郎)は父で、「俺は岸信介の娘婿ではない。安倍寛*の息子だ(*東條英機軍閥主義を批判し、平和主義を貫いた政治家)」という信条だったそうだ。

安倍晋三は、よほど複雑な心境を抱えて独自の思想を抱えて成長していったんだろうな、と思っていると

成蹊大学の構内をアルファロメオで走り回ってるバカがいる」のバカだったと言う証言もありw

 

安倍元首相の功罪は、これからも時間をかけて検証されて行くんだろう。

この映画については、政治オンチの自分としては丸呑みにはせず、ここにはない情報も拾っていきながら多角的な判断をしていくことが必要なんだろうと思う。

にしても、映画を観ながらここに映されている国に、本当に自分は生きているのだろうか、と思ってしまった。

何一つというと大袈裟だけれど、ほとんどのことを表面的にしか知らなかった。

まるで、井上陽水のリアル『傘がない』。

ニュースでは深刻な社会問題が流されているけれど、自分にとっては大切なあの子に会いに行きたいのに傘がないってことがいちばんの問題───。

若い時はこれでいいのかもしれないけれど(よくない)、いい年の国民までこうなってしまってる国は、これからどこに向かうんだろう。

みんなはちゃんとしてるんだろうか…。

 

AI先生が描いた「笑う安倍晋三元首相」This art is created by #aipicasso.