参上ルルのブログ

映画を観て思ったことを徒然と。

若い頃の旅はプライスレス

『青春18x2 君へと続く道』18年前、台南の日本人がオーナーのカラオケ店。バイトの高校三年生ジミーは、そこで財布を失くして働き口を探していた日本からのバックパッカーであるアミと出会う。4つ上の天真爛漫な笑顔を見せるアミに惹かれるジミー。しかしアミは、ジミーの気持ちを知りながらも日本へと突然帰国する。

18年後、自ら創業したゲーム会社を追われたジミーは、昔アミからもらったハガキを手にし、日本へと旅立つ。鈍行列車でアミの故郷へと向かう急がない旅。行く先々で人々との出会いがあり、現在の自分と向き合いながら18年前のあの頃の自分とアミへと想いを馳せる。アミの故郷に着き、当時のアミの想いを知ったジミーは、日本を後にし台湾で新しい生活を始めていく。

 

美しい映画だった。

18年前の台南の場面は、南国特有の日差しの中に、暑いではなく温かいと感じさせる街並みの懐かしさがある。

現在の日本の風景の中にも、東京のシャープな風景もある一方で、都会をひとたび離れると、壮大な雪景色があったり、路地裏の暗い飲み屋街に浮かび上がる赤提灯に遭遇したり。

台南に行ったアミ、あるいは日本を旅するジミーと同じようにハッとする光景がいくつもあった。

 

アミ役の清原果耶は、カタコトでも現地の言葉を喋りたい、現地ならではのスクーター二人乗りをしてみたい、現地の人に溶け込みたい、と目をキラキラさせる若い行動力のある女の子にピッタリだった。

でも、驚いたのはジミー役のシュー・グァンハン。

台湾ではスター俳優みたいだけれど、わたしは今回が初めてのお目見え。

最初、ジミーは18歳役と36歳役で別の俳優が演じているのかと思った。

普通にそう思って見続けていたけれど、

「よく似た感じの二人だな」「ん・・・?」「えー!」

名優シュー・グァンハンは、18歳と36歳を見事に演じ分けていた。

18歳の時は、もわっとした髪型から始まりヨレたTシャツから手をぶらぶらさせる若々しさはもちろん、外国から来た女の子と話す時の照れ具合といい、絶妙にちょっと古い時代の台湾の男の子なのだ。

そして現代の日本を旅する36歳のジミーは、成功者のオーラを身にまとった落ち着いた大人の男。

細いフレームのメガネをかけて長めの前髪の間から見える静かな目は星野源を彷彿とさせる。

若い時は、目も大きかったのに。大人になっちゃって…。

て、同じ人なんかい!

 

旅先の台湾で、日本と同じようにスラダンやミスチル岩井俊二監督作品が人気だったというのもリアル。

当時、海外で日本から来たと分かると、一生懸命自分の好きなアニメや音楽のことを話してくれる若者がいた。

言葉が違っても、それで一気に距離が縮まって親しくなる。

旅先の街角で、ワイワイと自分と同年代の人たちと盛り上がれる。

どこで生きていようと18歳は18歳だ。

このように、若かりし頃に一人旅をしたことがある人なら、映画と並行してすぅっと自分のことも思い返したのではないかしら。

わたしも自分がアミと同じように、東南アジアの行く先々でワクワクしながら旅してたのを思い出したし、今のジミーのようにああいう時間はもう自分には戻ってこない、ということも身に沁みた。

シンガポールの空港で夜を明かした時に会った、「名前でこっちの人にもすぐ覚えてもらえる」と言ってカラカラ笑っていた放浪マスターのAKIRA君は今どこに辿り着いているのだろう。

 

AI先生が描いた「昔の台湾でバイクに二人乗りするカップル」This art is created by #aipicasso