『仕掛け人・藤枝梅安』第一作。時代小説家・池波正太郎の3大シリーズの一つ。主人公の梅安は、江戸で評判の鍼医をしながら裏では殺し屋の顔を持つ。元締めから金をもらいつつも、世のため人のためにならない悪を人知れず葬るダークヒーローが見参!
デスクワークに向かない家のデスクでワークしてると、夕方には腰がバキバキになってくる。
『5時に夢中』でも見ようとテレビをつけると、まだ時間が早くって昔の『必殺仕事人』をやってたりする。
トランペットのBGMに乗って超かっこ良く藤田まことが一撃必殺。
場面変わって、なんだかおかんむりの菅井きんの「む〜こ〜どの!」と藤田まことの「は、はいっ。すみません!母上!」のドタバタ終演。
ほんと最高よな、必殺シリーズ。
今回の豊川悦司の『藤枝梅安』では、スガキンの役割を担うのは、梅安の身の回りの世話をするおせき演じる高畑淳子。
おせきは、世話好きあまって下世話バナシも好きという人物だ。
高畑淳子の演技はさすがのオモロキャラなのだが、地味メークと高長身も相まって、なんだかぬぼーっとした感じで地味なのだ。
トヨエツ仕掛け人は、ひたすらかっこいい人なので、おせきの下世話話を「はいはい」とクールに流してしまい、このコンビが弾けることなくちょっと残念。
そう、この映画は藤枝梅安のキャラのみならず、全ての要素がかっこいい。
「仕掛けの後の帰り道は遠くなっていけねえ」
梅安が殺しの後に、仕掛け人仲間の彦次郎の住処に寄り冷えた身体を休ませてもらう時のセリフ。
くーっ。かっこいい。こんな言い回ししないじゃないですか、普通。
画面の暗さも、かっこ良さに一役買う。
昔は電気がなかったんだから当たり前なのだけれど、映画は大体暗い。
部屋の脇に置いた行燈が作り出す影や、家の外の暗闇など。
単なるちょんまげでさえ、光の当たり具合で顔にいい塩梅の影ができる。
影や暗さをうまく使った、画面の見せ方が一枚一枚ポストカードになりそうだ。
それから、画面の暗さは何かが潜んでいそうで、何かが起きそうで、物語にさらに惹きつける効果もあった。
かっこいい映画として成立させた最後の要素は、トヨエツを筆頭とした役者陣。
仕事仲間の片岡愛之助、梅安に惚れる菅野美穂も良いけれど、やっぱり特筆すべきはトヨエツにとってラスボス(じゃないけど)、天海祐希。
トヨエツも天海祐希も、時代劇のイメージがなかったのだけれど、所作も如才ないし時代劇フォーマットにしっくりきていた。
美男美女に形式美。ケレン味に粋なセリフ。
うん、時代劇いいかもしれない。