『君たちはどう生きるか』宮﨑駿の10年ぶり監督作。宮崎監督が感銘を受けた1937年刊行の吉野源三郎の同名小説よりタイトルを借用。内容は、完全オリジナルの長編アニメーション。
映画を観てから5日が経過した。
バラバラだった感想も少しは形作られることを期待したのだけれど、一向にまとまらずいつにも増して雑記になります…。
公開初日の朝の回でいち早く観た72歳の叔父の感想は、「戦争の描写がすごい!この前、宮崎さんと半藤一利の対談読んだんだけれど、半藤さんの隅田川の体験とか宮﨑さんは感銘を受けて(以下略)」と興奮していた。
口を開けば、「戦争が、戦争が」の一辺倒の感想で、どんなに戦争が下敷きになった映画なのかと思って観に行ったら、冒頭の10分だけやないかーい。
とはいえ、戦時下の火事の中を行くシーンは、熱さと火の勢いにこちらが息苦しさを覚えるほど。
すごかったよ、おじちゃん!
後のシーンは、叔父の感想も致し方なしと思えるほど、実は火事のシーンほどガツンと印象に残るものはない。
チーム湯婆婆もどきだったり、こだまがさらにゆるキャラ化したワラワラ、カリオストロの城で見たような崩れていく階段を駆け上っていくシーン、など、今までの宮﨑作品のオマージュ的な場面が眼前で繰り広げられていく。
ただし、すーっとそれが流れていくだけではなく、きちんと意識にジャリジャリとした感覚が残るのがこの作品の醍醐味。
なんでかなあと思い返してみると、宮﨑さんにしてみれば当然なのだろうが、細部へのこだわりだと思い当たった。
主人公が疎開する前に、通りを遠くに歩く着物姿の女性の歩き方。顔も分からない小ささなのに、着物で歩く時は重心が低く腰で歩く感じとか、インコの糞を大量に次々と浴びせられる時のビシャ、ビシャ、っとした感じとか。
いつも話題になるジブリ飯は、バターとジャムをたっぷりのせたパンだったけれど、バターもジャムも質感がリアルだから、これじゃああまりにくどくてノーサンキューだわ、あ、でも、戦争中だとしたら最高の贅沢ってこれのこと、って思ったり。
ちょっとしたきっかけから、「あれ。これって…」と思索に入り込ませる匠の妙。
ストーリーの盛り上がりや、ドラマチックなエピソードの足し引きで興味を惹きつける代わりに、ほんのちょっとした事柄の描き方で自分の世界を観客に伝えている。
「神は細部に宿る」とはまさに。
ちなみに、隣の席は外国人のカップル。女性は少し日本語が苦手なようで、上映中も隣の男性にこそこそと尋ねていた。
そんな彼女は、本編が終わり水色のクレジットが始まったと同時に「えっ」(厳密には「え」じゃないかも)と驚きの声をあげていた。
言葉はわからなくても、ストーリーじゃなくても、宮﨑監督の幻燈の世界にすっかり入り込んでいたようだ。
AI先生が描いた「ジブリ風の鳥のイラスト」I created this art by #aipicasso