参上ルルのブログ

映画を観て思ったことを徒然と。

あなた 目を覚まして

『ケイコ 目を澄ませて』生まれつきの聴覚障害者であるケイコは、下町にある小さなボクシングジムで日々トレーニングに励んでいる。

ボクシングに邁進できない心の澱を感じていたとき、ボクシングジム閉鎖の噂が流れてきて───

 

先日、発表された2022年度のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画作品賞、主演女優賞、助演男優賞、読者選出日本映画監督賞の4冠を達成。

続く毎日映画コンクールでも、日本映画大賞、主演女優賞、監督賞、録音賞、撮影賞を受賞。

 

公開が始まってからすぐに評判を呼んだいたので、ある程度そういうものだろうと思っていたのだけれど、ようやく上映を観る機会に恵まれて、映画を観終わっての一番の感想は、タイトルの意味はこれだったか、というちょっとした驚きだった。

解説を読むと16mmで撮ったとのことだけれど、なんと言っていいのか。

暗さは黒ではなくてどこまでも深い紺で、光はすっとどこまでも届くような光。

そしてたまに温度まで伝わってくるような黄を帯びた明るさ。

劇中の音も、音楽で盛り上げたり、演出で抜き出したりということではなくて、自転車のベルや電車の轟音など耳の聞こえないケイコの周りに普通に流れている音をそのままBGMとして使っているかのように映像と調和がとれている。

岸井ゆきの演じるケイコの目も澄んでいるが、ケイコの住んでいる世界が澄んでいた。

 

障害者の困難さや健常者との衝突を描く日常ではなく、聾唖のケイコが普通に両親から独立し仕事をして、普通に生きがいであるボクシングに打ち込む日常を淡々と描いている。

無理に健常の世界に取り入るのではなく、淡々と自分の世界で生きていく。

 


聾唖の友達とランチをして、健常の人の中で働き、やりたいボクシングをする。まっすぐなケイコの周りには、自然にボクシングの会長やトレーナーのように応援する人や共に生きようとする人が集まってくる。

孤独だなんだと自室で嘆いている自分が恥ずかしくなる映画。

AI先生が描いた「女子ボクシング」I created this art by AI Piccaso #aipiccaso